ジュリア?カセムほか編
インクルーシブデザイン:社会の課題を解決する参加型デザイン
学芸出版社、2014
Inclusive=すべてを含んだ, 包括的な
バリアフリーという言葉をご存じの方も多いと思う。Barrier(=障害)から自由になるのだから、車いすの方が段差で移動できなかったところにスロープを設けると移動可能になるといったことが当てはまる。
ユニバーサルデザインという言葉もある。難しい漢字で表記するのではなく、わかりやすいアイコンを使えば、子供も外国人も、実は大人も理解しやすい。多くの人のバリアを取り除く。universal(=万人共通の)デザインの目指すところだ。
そこに、第3の概念が現れた。それがインクルーシブデザインだ。普通ならバリアフリーの対象となる人々を「リードユーザー」と呼び、その人のためのデザインを"一緒に" 作っていく。そして、できてきたものが、他の人々にも使われる。そんなデザインプロセスである。
その事例は本書を眺めて頂くことにして....
なるほど、と思ったことが2つある。
ひとつは発想法としての役割だ。新しいことを発想するには、「一般的」でないことを思い浮かべる必要がある。リードユーザーという存在に着目することは、その一つの手掛かりになる。
一緒に作っていくというのも、面白い。バリアフリーというのは、「特別に」デザインすることで、実は「一般」から隔離された存在にしているのだと言う。デザインプロセスに巻き込み、さらにはそれを他の人にもメリットを生むものとすることで、「一般」の中に位置づける。ユニバーサルデザインは、有名な7原則があるが、そういうトップダウン的な発想ではなく、ボトムアップ的な発想に基づいているのが、「インクルーシブ」なのだ。
必ず誰かの役に立つ。
それが、他の誰かの役に立つ。
...そんなものづくり。やってみませんか?(K. M.)