徳井淑子
図説ヨーロッパ服飾史
河出書房新社、2010
人々は様々な形の衣服を作り、最も身近な生活環境を形成してきました。衣服の役割は暑さや寒さ、風雨から身を守るためだけではなく、自分を主張したり、社会の一員であることを誇示したりと表現の手段でもあります。人が衣服を着装すると、社会の中で意味を持ち、多様なメッセージを発します。従って衣服は、それぞれの時代と社会の中で、人々の生活感情を映し出す鏡なのです。衣服の形が、色が、材質が、着ている人が意識するしないに関わらず、何かを語っていると言えます。
本書は絵画に描かれた、フランスを中心としたヨーロッパの、たくさんの服飾の造形と表現をていねいに、かつ詳細に解説しています。第一章と二章では、衣服の形や飾り、色や模様、着装について、読み解いています。第三章と四章では異国趣味とレトロ趣味、ジェンダー、下着、子供服について取り上げています。当時の時代背景とフランスの文化、美意識が見えて、たいへん興味深く感じます。たくさんの挿絵を見ているだけでも美術館に行ったようで楽しい気分になります。(H. G.)