A. C. サムリ(阿部真也?山本久義監訳)
国際的消費者行動論 ―マーケティング戦略策定へのインパクト―
九州大学出版会、2010
日本の総人口は減少傾向にあり、しかも少子化傾向にあります。したがって、若年層の需要が多いアパレル産業は、将来、海外の市場をターゲットにせざるを得ないことが指摘されていて、経済産業省も東京コレクションなどに力を注いでいます。日本から発信するファッションには、海外から評価され注目される点もありますが、これがビジネスに繋がらないことが日本の悩みであると言われています。
この理由として、意外性のある“おもしろさ”だけでは、購入や着用には結び付かないことが考えられます。海外市場をターゲットにする場合には、その国の文化を理解し、その国の嗜好を理解する必要があり、“身体の一部”であるファッションに関するビジネスでは、文化や嗜好に関する研究は欠かせません。
本書は、消費者行動を体系的に分析する手法を提案している点、そしてグローバル市場をターゲットとしている点でも、時宜を得た画期的な専門書といえますが、私が最も評価するのは、異なった市場の消費者行動には、“文化”の影響が大きいことに注目して、独自の調査結果について発表している点です。これからのファッションビジネスの研究にあたっては欠かせない貴重な一冊です。 (U. K.)