モノの形と色にはそれぞれ意味があります。2009年8月15日にTV放送された「世界一受けたい授業」で「かたちに秘められたミステリー」と言うテーマのもと、不思議の一部を解説しましたが、ご覧いただいたでしょうか。
TVでは、ペットボトルにはなぜ丸と四角があるのか?コンビーフの缶詰はなぜ台形のかたちをしているのか?などをとりあげました。TVをご覧にならなかった人のために解説すると、丸い容器は、中に入った炭酸水の圧力がボトルの内側を均等に押すため、乱暴に扱ってもかたちが変形しない。もし四角い容器に炭酸水を入れると、ボトルに均等な圧力がかからないため、面が変形してしまいます。したがってサイダーなどの炭酸飲料水の入ったボトルは丸なのです。お茶などは炭酸が入ってないものは、圧力がありませんから、取り扱いが楽な四角いボトルが使われています。コンビーフの缶詰が台形なのは、機械が肉を詰めやすくするためとできるだけ空気に触れないようにするための工夫です。
さて、今回はまず「止まれ」の道路標識の話です。どうして「逆三角形」なのでしょうか。
普段我々が認識している三角形は非常に安定した形で、強度をイメージさせます。そのため、建築や鉄橋の構造材(トラス構造)などによく利用されます。しかし、逆三角形にすると非常に不安定に感じます。「とまれ」の道路標識はこの不安定の効果を狙っています。不安定なモノに人は特に注意を払う習性があるためです。
また、なぜ「赤色」がベース色に使われていると思われますか?「赤色」は他の色に比べ特に「波長」が長く、目立つ、遠くからでも識別できると言う特徴を持った色なのです。このように「止まれ」の道路標識は、人間の心理的な効果と色の特性をうまく組み合わせた優れデザインなのです。
次も「色」の話です。皆さんは、スズメバチ、虎、毒蛇、ウミヘビ、毒グモ、毒キノコをご存知でしょう。さて、共通点はなんでしょうか?そうです。これらの生き物のすべては「黄色と黒の縞模様」で身体がおおわれています。自然界でこの模様は「私に近づくと危険だぞ」というメッセージと認識されているようです。
なぜこのような模様が自然にできたかは分かりませんが、この模様を利用した身近なデザインに「踏切の遮断機」があります。道路工事をする人が着ているベストや道路の警戒標識にもよく見られますよね。実は「黄色やオレンジ」は進出色と言われ、色が飛び出したように見えます。また警戒色としても認知されているようです。また、逆に「黒色」は後退色と言われ、他の色より向こう側にあるように感じられます。この特性をうまく利用したのが「黄色と黒の縞模様」なのです。たぶん、先に紹介したこの模様を持った生物は、人間がモノを作り出す以前から存在していたでしょう。それらの生物が、これらの色の特性を認識していたとは思いませんが、優れたデザインの多くは、こう言う自然からヒントを得たものなのです。
長くなるので、この続きは、8月1日(日曜)開催のオープンキャンパスの模擬授業でお話することにします。是非、聞きに来てください。(T. T.)