地球温暖化の続きです。前回は地球温暖化の科学的な調査?研究データとそのメカニズムを説明しました。まとめとして、温暖化ガスの主体は化石燃料(石油や石炭など)を燃やすときに排出される二酸化炭素(CO2)であり、次の3点を認識して全世界の人間が地球温暖化に立ち向かわなければならないと述べました
1997年京都で開催された第3回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP3と略され、合意文書が京都議定書)では、二酸化炭素削減目標は2008年?2012年の間に先進国全体で1990年比5%減、日本は6%減でした。しかし、この条約には大量のCO2排出国であるアメリカ、中国、ロシアなどが参加していませんでしたし、削減には成功している国はありません。京都議定書の目標達成は絶望的です。このまま温暖化ガスの排出を続けていけば大変なことになるので、今年の12月に開催される第15回国連気象変動枠組条約締約国会議(COP15)で、2013年以降の温暖化対策の国際的な枠組みを決めることになっています。
今年に入り、アメリカではオバマ新大統領が就任演説で地球温暖化を逆戻りさせると宣言しました。日本では、9月の総選挙で圧勝した民主党の鳩山新首相が9月22日の国連気候変動首脳会議で「日本は2020年までに温暖化ガスを1990年比で25%削減する」と表明しました。このように温暖化ガスの排出量削減の機運は高まりつつあります。
図1に示した日本のCO2排出量の実績を見ると、削減どころか2007年には1990年比で9%も増えています。その要因の一つにCO2を排出しない原子力発電所の事故が相次ぎ、稼働率が60%まで低下していることが挙げられます。麻生内閣では2020年までの温暖化ガス削減目標を8%としていましたから、25%削減は大変大きな目標となります。
これまでの政府の試算では、25%削減を国内での対策だけで実現するには総額190兆円(日本の国の予算の約2年分に相当する額です)の省エネルギー?新エネルギー関連投資のほか、1世帯当たり年36万円の負担や生産活動の抑制などが必要で、実質国内総生産(GDP)を3.2%押し下げることになるとしています。逆に、温暖化対策を強化することによる経済に対するプラス効果も考えられます。(ただし、鳩山内閣の掲げる25%削減は、国内での対策だけでなく、森林による二酸化炭素吸収や他国からの排出枠購入とで達成するとしています。また、アメリカや中国などの主要排出国が参加すればという条件を付けています。)
図2は日本のCO2の排出がどの部門からのものかを1990年からみたものです。一番多いのは全体の約36%を占める工場などの産業部門です。しかし少しですが減少傾向です。次は自動車などの運輸部門で約20%ですが、これも減りぎみです。これら減少は省エネ技術や車の低燃費化技術のよるものと思われます。この後もエネルギー効率の高い機械やハイブリッド車?電気自動車など省エネルギー技術の開発が進めば削減が期待できそうです。
右肩上がりで目立つのは商業?サービス?事務部門と家庭部門です。両部門ともに1990年比で1.4倍以上に増え続けています。これは冷暖房の普及とそれに頼りすぎていること、無駄な照明やテレビのつけっ放しなどわたしたちの生活スタイルによるものと思われます。また、発電所の排出量が増えているのは前にふれたように原発事故による火力発電の増加が原因ですから、原発の稼働率を上げることが必要となります。
いずれにしてもCO2を削減していくためには、CO2を排出しない太陽光発電や風力発電などを増やし、個々人では省エネ家電を利用し、省エネルギーの生活スタイル(ケチケチ生活がよいのかもしれません)を身につけていくことが必要なようです。(E. J.)