色の好みは、ホントさまざま
色の好みに普遍的な傾向はあるか
さて、どんな色が好まれるのか
色の好みの研究の歴史は長い。古いところでは、たとえばアイゼンクのものがある。赤、橙、黄、緑、青、紫、白っぽい赤、橙、緑、黒っぽい黄の10色。白、黒。これを30人にランク付けしてもらったところ、青がもっとも好まれた。もっとも選ばれることが少なかったのは、橙。こういう傾向は、その後の調査でも見られることが多かったので、「青が好まれ、橙が嫌われる。」というのは普遍的な傾向であるかとも思われた。
実験風景
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しかし、このような研究には批判もあった。ひとつは、純色ばかりでいいのかというもの。もっと淡い色や暗い色やグレーっぽい色もあるのだから、色の好みはそういったものも含めて抽出すべきだというものである。もうひとつは、個人差をきちんと捉えているのかというもので、少ないにしろ橙を好む人もいるのではないか。好みの色を1つや2つ選ばせただけでは、それがわからないのではないかというものだ。
...で、やってみた。
実験自体は簡単なものだ。灰色の台紙にさまざまな色紙を貼って、印象評価してもらえばいい。だから誰かがやっていても良さそうなものだが、多数の色紙を評価させるのが面倒だからか、私の知る範囲では、数百色を評価させたようなものはないようだ。
第1主成分と第2主成分
第3主成分と第4主成分
さて、データを集めてみると、個人差は割と大きかった。それで、個人差を含めて解析するために主成分分析を実施した。結果を眺めてみると、色相の好みの違い(赤系統が好みか、青系統が好みかといったもの)も、明度の好みの違いも、鮮やかさの好みの違いも関係していることがわかった(明るい色好きと暗い色好き、鮮やかな色好きとくすんだ色好きがいるということ)。
蓼食う虫も好き好き。好みは争うな。ということであろう。
※紹介した研究の詳細は....槙 究、渡部裕子、飯島祥二:単色の印象評価 ?背景色と個人差に着目して?、日本色彩学会誌、Vol.31、No.1、pp.2-13、2007 参照PDF