出版社:彰国社
出版年:2018年5月
編集: 北欧環境デザイン研究会
本書は、北欧3か国(スウェーデン、フィンランド、デンマーク)のさまざまな環境デザインや社会システムに焦点をあて、そうした環境やシステムによって支えられている、「ふつう」に生活している人々の「生活の質」を描き出そうとする試みである。「北欧」と言っても、それぞれの国によって国情が異なり、歴史が異なり、人々の考え方も異なっている。そしてもちろん、それぞれの国一つとってもさまざまな側面があり、決してひとまとめにして語れるものではないだろう。しかし、そうした北欧のさまざまな環境デザインをあえて一括りにして一覧してみると、それぞれの国ごとの個性を認めつつも、それらのデザインに通底する価値観のようなものに触れることができるように思う。
(中略)
北欧における個人の「ふつう」の生活が、これらの仕組みと環境デザインによって立体的に取り巻かれ、包括的に支えられていることを感じていただけると幸いである。
(「はじめに」より抜粋)
目次
- はじめに/環境行動的視座で北欧諸国を見ることの意味
- スウェーデン王国/フィンランド共和国/デンマーク王国
- 第1章 住まいのしくみと環境デザイン
- 1.自立した暮しを支える高齢者の住宅/2.地域居住を支えるサービスハウスとサービスセンター/3.安心感と生き甲斐を得ることのできる高齢者住宅/4.居住者同士の助け合いが生まれるコレクティブハウス/5.課題の多いひとり親やドメスティックバイオレンス被害者のための居住支援/6.コミュニティの絆を築くコモンスペース/7.病棟と在宅で展開される緩和ケア/8.使いやすさが環境配慮につながる/9.エコビレッジ 環境負荷軽減のライフスタイルを目指すコミュニティ/10.ストックホルムにおける住宅地格差の出現と再生に向けた試み/11.ミリオンプログラム時代の団地再生/12.安全をまもるバリアフリー
- 第2章 学びや仕事のしくみと環境デザイン
- 1.子どもの「日々の家」として計画されたフィンランドの保育環境/2.園児の躍動を生み出す自然と一体の保育環境/3.子どもの好奇心と創造性を育むデザイン保育園/4.都市で暮らす親と子を支える居場所づくり/5.ワークユニット型学校/6.多様な学習を受けとめる6種類の部屋/7.日本の20年先を行く教育コンセプト「動く学校」/8.障害の有無によらず子どもたちが共に学ぶ/9.想像できないコンバージョン/10.ナッカ市における障害者の就労の場の整備/11.工場を美術大学にコンバージョン
- 第3章 自分を取り戻すための環境デザイン
- 1.「自立」して生きるために/2.ミュージアムの中に住む/3.静謐の読書空間から「まちのリビング」へ変革する図書館/4.コペンハーゲン近郊の珠玉の美術館/5.サウナ建築が都市の公園になる/6エーレスンド海峡を挟む二つの図書館/7.子ども病院のアート/8.社会との接点を断ち切らない医療環境/9.生活弱者の自立を包摂的に支える仕組み/10.シンプルなデザインに宿る美と精神性/11.癒やしのコミュニティ
- おわりに/北欧の暮らしと環境を概観して