tachi's PAGE
バックナンバー 2016年11月
2016.11.16
常磐祭も無事に終わりました。今年は、準備日の金曜日には、冷たい雨が降ってえらく寒くなりましたが、土日はすっかり晴れてあたたかく、よい学園祭日和となりました。大勢のお客さんに見てもらって、良い評価をいただけたように思います。今年は例年よりも模型が若干早く完成し、説明パネルや装飾に時間をかけるゆとりがあり、会場設営も比較的スムーズに終わりました。実行委員会に追い出しを食らうより早く退去することができたことは、画期的だったと言えるでしょう。とりあえず怒濤のような1ヶ月半でしたが、終わってしまうと寂しくもあります。
ただ、学祭にかぶせて、15日が〆切の原稿があったことに気付かされ、これはちょっと大変でした。学祭の最中に研究室に籠もって執筆しようかとも思いましたが、思いもかけぬOGが現れて話し込んだり、展示の様子を見に行ったりしていると、あっという間に時間が過ぎてしまいました。学祭が終わってやれやれと一息つく間もなく、結局月曜火曜の2日間で何とか仕上げて間に合わせましたが、やれやれです。
10年前の常磐祭に出展したときのゼミ生が2人、前触れもなく常磐祭に遊びに来てくれたのはびっくり。ひとりは子連れ抱っこひもで現れ、すっかりたくましい主婦。この年代の卒業生はみんな出産ラッシュを迎えているようです。もうひとりは数学の教員免許をとって、高校で教えているとのこと。こちらも結婚されたということで、どうやらみんな名字が変わっています。名字を聞いても全然誰だかわからなくなっちゃいますね。おそらく9年ぶりくらいに研究室に訪れたことになりますが、さほど違和感なく溶け込んで、なんだかついこないだ卒業したばかりの、2〜3年前の卒業生だっかたな?というような雰囲気でした。大学が、いつでも戻ってきていい場所だと思ってくれていると、こちらも嬉しいです。
2016.11.05
はやくも11月。今日明日はAO入試で週末も出校しています。AO入試がなくても、この時期は学園祭直前ということで、どっちにしても研究室を開けることになりますが。学園祭もいよいよ来週に迫ってきました。今年は少しずつ模型も上がってきて、例年よりも多少余裕をもって準備が進みそうな勢いです。
昨日の夕方にMERA研究会があり、東大駒場キャンパスに行ってきました。テーマは「スウェーデンにおける集合住宅の変容と再生」と題して、東洋大学の水村先生によるレクチャーの後、スウェーデン王立工科大学のエリック・ステンバーグ先生による講演会。スウェーデンの住宅政策が、すべての国民に質の高い住宅を供給しようとする福祉国家政策から、現在では大きく変化してきており、住宅地に格差が生まれてきている、という話。EU加盟によるグローバル化、新自由経済主義の影響によって民営化が進み、また移民の大量流入による人口動態の変化によって、高所得者向けに都市中心部開発されるいっぽうで、郊外住宅地に労働者や高齢者、移民を中心とする低所得者層が集まる傾向が強まっているとのこと。こうした地域では、教育レベルも医療レベルも低下してしまい、商業サービスも撤退するなど、地域の衰退に繋がってしまいます。建築家であるステンバーグ先生は、「質の悪い住宅地」として放置されそうになっている郊外住宅地テンスタ地区を、住宅改修によって再生を手がけています。実際に住んでいる人からの評価が高まり、むしろ「よい住宅地」へとイメージも変わりつつあるようです。現在では、このテンスタ地区に拠点を置いて学生の建築教育も行っており、コミュニティと関わりながら実践的に学ぶことで、教育効果も高まっていることを実感していると言ってました。
いろいろと驚くことがあります。スウェーデンには本当に世界から移民・難民が多く流入しており、このテンスタ地区にも18000人ほどの移民が生活しており、その使用言語は96カ国にも上るとのこと。住宅に対するニーズも多様であり、集合住宅のリノベーションによって対応することで、彼らの生活の質が高まるとともに、地域の質も落ち着いてくるようです。スウェーデンでは1960〜70年代に「ミリオン・プログラム」として大量の住宅供給が行われましたが、それらは、きちんとプランニングされ、必要な規模を確保し、質の高い設備を完備した住宅を、適正な価格で供給する、というコンセプトで行われていました。プレハブ化、モジュール化を進めることで工業的に大量生産することを可能にするだけでなく、その際にきちんと住宅の質を確保することが条件だったわけです。それらはシンプルなプランで構造的には柱と外壁で持たせており、どうやら将来的に時代に合わせた改修を行うことを最初から計画に含んでいたらしいです。住宅内の間仕切り壁はすべて移動可能で、隣の住戸同士や上下階を繋げたりして、多様な新しいプランを生み出すことが可能となっていました。設備ももともと良質なものを使っており、再利用できるものはすることで、改修コストも抑えられるようです。大量供給の時代にそこまで仕込んでおいたからこそ、現在においてその資源を活用することができるのかもしれません。
←前月へ
翌月へ→
↑Page Top
/
←Back
/
←tachi's Page
/
←SD Labo HomePage
2003-2016, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.