10月22日(土)に、生活環境学科主催の公開講座「草木染の色と手法―天然染料の歴史とその特徴―」が開催されました。
お天気はあいにくの雨となってしまいましたが、午前は講演、午後は実習と、大変充実した公開講座になりました。受講生は草木染に興味のある女性ばかりで、自然界にある柔らかい色合いの草木染の布標本に、会場からは思わず溜息が洩れていました。
城島栄一郎氏(本学科教授)による「せんいの話」では、天然繊維である植物繊維や動物繊維についての詳しい解説がなされました。被服学科や生活環境学科の同窓生は、被服材料学の講義を懐かしく思い出されたことと思います。
山崎和樹氏は、神奈川にある草木染研究所柿生工房の主宰を務められる一方で、東北芸術工科大学で教鞭もとられており、神奈川と東北を往復される多忙な日々を過ごされています。御祖父は文学者で「草木染」の命名者である山崎斌氏、御父は群馬県重要無形文化財保持者の山崎青樹氏という恵まれた環境で、和樹氏は生粋の三代目草木染作家としてご活躍です。
奈良時代から江戸時代までの各時代の染色について説明され、特に、各時代の色を社会背景との関わりにおいて考証されました。例えば、江戸時代には奢侈禁止令が出され、茶色と鼠色の使用しか許されなかった人々は染料と媒染料の組み合わせで「四十八茶百鼠」と言われるような多色の茶色と鼠色を作り出して楽しんだようです。草木染は、植物の葉?枝?幹?樹皮や根などに含まれている色素を抽出して、糸や布に染める染色技法ですが、染料は生薬になるものも多く、抗菌?防虫効果、紫外線防止効果があるものも多いとのことです。
午後の実習では、西洋茜染で絹ストールの染色を行いました。西洋茜の根を湯に浸して洗った後、酢を少量加えたお湯で根を加熱沸騰。それを布でこして染料液を抽出。試験片では媒染剤の異なる4種類の染色実験を行って発色性の違いを観察し、絹ストールは、媒染剤に焼ミョウバン(Al)を使用し、鮮やかな茜色に染め上げました。写真は、染料液に浸した絹布を皆で動かし続け、水洗い後にタオルで脱水し、よく振って乾かしている様子です。
山崎先生は「自然の生態系と共に生きることを実感されながらお仕事をされて」おり、熱心な参加者達の反応に大変満足された様子で、帰り際に「今日はとても楽しかった」と感想を述べて下さいました。ご参加下さいました皆様、是非、茜色の絹ストールでおしゃれを楽しんで下さい。
今回は、実習定員20名を上回る方々からお申し込みを頂きました。お断りさせていただいた皆様には、お詫び申し上げます。
(生活環境学科公開講座委員 川上 梅)