英語学
語学、というと、実際にことばを使う能力を指して使われることが多いので、英語をできるようにすることが英語学であると考えるかたが多いかもしれません。でも実は、英語学とは、「英語ということばについて学ぶ学問の分野」を意味します。学んでいると、いろいろ疑問に思うことも出てきます。
たとえば、発音について(音声学の領域です)。
— 日本語の母音は5つ、アイウエオ。英語の母音はいくつあるのかな。
もしくは、単語について(形態論の領域です)。
— childの複数形は、なぜchilds ではなく children なのかしら。
または、意味変化について(意味論の領域です)。
— 大昔には deer が広く一般に「動物」の意味だったらしい。でも今では「鹿」のことだ。どうしてだろう。
さらには、文法について(統語論の領域です)。
— have + 過去分詞という完了形に、「継続」「経験」「完了」といった複数の用法があるのはなぜ? (なんとなく、日本語の「られ(る)」に「可能」「受身」「尊敬」「自発」といった複数の用法があるのと似てやしない??)
はたまた、文脈について(語用論の領域です)。
— 徹夜で勉強している人が “Coffee keeps me awake.”と言ったらコーヒーを飲みたがっている。でも、夕食後にコーヒーをすすめられた人がそう言ったら断っている。同じセリフなのに、どうしてかしら。
もひとつ、対人表現について(社会言語学の領域です)。
— 「英語に敬語がない」なんて、ウソだ。人間関係に上下がある限り、丁寧な表現はあるにきまっている。性別、年齢、職業、方言、といった要素は、言語表現にどうかかわってくるのだろう。
などの問いが考えられます。
このように、英語ということばに関してのさまざまな問いに答えていくのが英語学なのです。
上に挙げたのはごくわずかな例であり、では、ほかにどんな問いを発して、どんなふうにそれを調べていけばいいのか? それを、英文学科で学んでいくわけです。お楽しみに!