SpaceDesign Labo, JISSEN Univ.
2020年度卒業研究 空間デザイン研究室 坂口夏初
近年多くの商業施設では、さまざまに工夫された休憩場所が設けられ、多様な使われ方がされている。単に客の快適性だけでなく、地域の新たな居場所として活用されているのではないか。一方で新型コロナ感染の影響で、その過ごし方にも変化が見られる。本研究では、そうした休憩場所の使われ方を経時的に調査することで、その変化を追う。
マークイズみなとみらい(MM)、横浜ベイクォーター(YB)、NEWoMan横浜(NY)(表1)を対象として、休憩場所の使われ方を調査した。9月末~12月末にかけて2週間に1回、12~15時、15~17時半、17時半~の3つの時間帯に訪れ、1箇所の休憩場所につき20分の観察調査を行った。各場所について、休日?平日18回ずつの記録を行った。
利用者の延べ人数は、NY、MM、YBの順となった。全体で見ると利用者層や使われ方に大きな違いは見られず、どこも、20~30代が中心、男女比はやや女性の方が多く、1人利用と2人利用でほとんどを占める。行為としては、会話、飲食、携帯が多い。平日と休日を比べると、休日の方が利用者が多く、女性、複数人での利用が増えることなど、どの施設でも共通していた。時間帯による利用の変化も大きくない。
3施設それぞれフロアごとに集計してみると、YB、NYは特定のフロアに利用者が偏り、その行為内容は似ていたが、MMはどのフロアにも利用者がおり、フロアごとの行為内容に大きな差が見られた(図3)。MMでは、フロアごとにコンセプトを定めた内装が設けられ、休憩場所の個性が利用状況に反映されていた。
10月?12月の時間による変化をみると、どの施設も次第に利用者総数は減少している。外部の休憩場所よりも内部の休憩場所の方が減少が大きく、気温低下の影響よりも、感染状況拡大の影響が反映されていると思われる。? そんな中、PC利用はどの施設でも増加していた。密を避けていられるテレワークの場所としての利用が定着しつつある。
コロナウイルスの影響により、利用者が減少しているからこそ、休憩スペースの利用によって密が避けられるのかもしれない。
(表1)調査対象施設
マークイズみなとみらい
所在地:神奈川県横浜市西区みなとみらい3-5-1
最寄駅:みなとみらい駅
施工:大成建設
延床面積:114,227m2?構造:S造、SRC造、RC造
階数:地下4階、地上6階
竣工:2013年
休憩スペース数:31箇所
「用がなくても行ってみたくなる心地よい場所」づくりをテーマに、美術館?グランモール公園と一体となった立体都市公園。
横浜ベイクオーター
所在地:神奈川県横浜市金港町1-10?最寄駅:横浜駅?施工:竹中工務店
延床面積:58,639m2?構造:S造、RC造?階数:地下2階、地上8階
竣工:2006年
休憩スペース数:31箇所
曲線を多用した海辺の広場とそれをつなぐ路地状の通路が、訪れる人々に「ゆとりの空間」を提供し、「海?光?風」を感じられる商業施設。
NEWoMan横浜
所在地:神奈川県横浜市西区1-1-1?最寄駅:横浜駅?施工:竹中工務店
延床面積:98,491m2
構造:S造、RC造
階数:地下3階、地上26階?竣工:2020年
休憩スペース:27箇所
JR横浜タワー内の商業施設。都会の喧騒を忘れて深く呼吸ができる、伸びやかで心地の良い空間。
(図1)利用者年代(グラフ)
(図2)利用形態(グラフ)
(図3)MMにおけるフロアごとの行為(グラフ)
(図4)利用者人数の推移(グラフ)
(図5)PC人数の推移(グラフ)
2003-2021, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2021-01-23更新