SpaceDesign Labo, JISSEN Univ.
2019年度卒業研究 空間デザイン研究室 一木伽奈子
韓国のホンデには「歩きたい通り」という通りがある。この場所では「バスキン」という路上パフォーマンスが毎日夜遅くまで行われていて、活気ついている(図1)。しかし単にバスキンを楽しむだけではなく、この通りならではの魅力があるのではないか。本研究では「歩きたい通り」の魅力について考察する。
韓国ソウル市内のホンデ(弘大)地区にあるオウルマダン路(通称歩きたい通り)を対象とする。全体の通りの長さは約500m、そのうちのバスキンが盛んに行われている通りは長さ50m、幅は左歩道が約11m、車道が約3m、右歩道は約4mの区画である。7?8m間隔でバスキンが行われていて、1時間に最大5グループが公演を行うことができる。主にその場所を中心に人が集まっている。また週末の14時?22時の間は歩行者天国となる。
ホンデ歩きたい通りを対象に以下の調査を行った。
(1)歩きたい通りの基本情報、バスキンの歴史、管理方法についての文献調査
(2)時間ごとの使われ方観察調査
調査日:2019/10/25(金)?10/26(土)
11時?14時?17時?20時の3時間おきに観察を行い、その様子を地図にプロットした(図2)
(3)通りの楽しみ方仮説を立て、現地で検証を行った
調査日:2019/12/30(月)?12/31(火)
?17時からバスキンを始めるグループが多く、それに伴って観客の人数も多くなっていき、20時にピークを迎えた。
?20時には約50mの範囲に推定800人もの人々がバスキンを見に訪れていた。
?17時からはだいたい5箇所全てで公演を行っていて、20時台になると1グループに約150人?200人もの人が溢れかえっていた。
?通りにはさまざまな年代?国籍の人がおり、老若男女にかかわらず楽しめる場所となっていた。
バスキンそのものの楽しみと、歩きたい通り全体の楽しみという2つの側面から、それぞれの楽しみ方のバリエーションを抽出した(表1、2)。
路上のバスキンは、パフォーマーと観客との距離が近く、それを目的にする人にとって、直接関われる繋がりは大きな魅力である。一方で、たまた流れていた音楽に影響されることもある。距離感や楽しみ方に幅があり、多様な人が受け入れられる場所となっている。
屋台や店舗で買い物しつつ楽しんだり、他の楽しんでいる人を見て楽しんだり、自分が楽しむ様子が他の人と共有される楽しさがある。それぞれが自ら主体的に楽しさを発信し、それが全体に共有されているとも言える。そこからコミュニケーションに繋がることもある。個々の楽しさが連鎖されることによって通り全体の魅力に繋がっているのではないか。
通りの魅力は、バスキンだけではなく、そこにいる人たちによる楽しみの連鎖や共有にもある。通りを楽しむ人たちは、楽しむ側でも楽しませる側でもある。これらの関わりは歩きたい通り特有の「ホンデ文化」と呼んでもいいのではないだろうか。
(図1)バスキンの様子
(図2)通りの時間帯地図
(図3)パフォーマーに進んで話しかける
(図4)バスキンを見て楽しむ人を見て、間接的に楽しむ
(表1)バスキンの楽しみ方
パフォーマーに進んで話しかける(図3)
パフォーマーからの投げかけに答える
バスキンの音楽に合わせて踊る
お店でご飯を食べることが目的であるが、窓から見えたバスキンを魅入る
目当てのパフォーマーを待っていたが、別のパフォーマーを魅入ってしまう
たまたま通りかかった時に流れていたバスキンの音楽のリズムに乗る
(表2)通り全体の楽しみ方
パフォーマー以外に、その空間を盛り上げようとする活動があり、それを楽しむ
バスキンを見て楽しむ人を見て、間接的に楽しむ(図4)
人が集まっている空間を見つけて興味を持つ
2003-2020, Space Design Laboratory, JISSEN Univ.
Status: 2020-01-23更新